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テレビ界もコロナの影響で再放送ばかりを流すので、

こちらでも過去の反響のあった採集記を再掲載したいと

思います。

知らなかった方には新鮮かもしれませんが、10年前の

千葉県産オオクワガタの採集記になります。






2010年7月6日
、この日は

朝から無風で空気はかなりの水分を含み

体にじっとりと覆い被さってくる

空気が止まったような、そんな一日の始まりだった。



昼間の仕事を終えた時点でも空気は重く、

気温は30℃近い。

「樹液を回って帰ろう」

それは朝を迎えた時点で決めていた。

本日の仕事は千葉県北部。

ならば、あそことあそことあそこ、そうだあの新ポイントも・・・。


身支度を採集モードに変えて、

車に乗り込む。


相変わらず空気に動きがなく暑い・・・。


3ポイントほど立ち寄り、たくさんのノコギリやコクワをスルー。

そうだ今日はちょこっとだけ気になる丘陵へ足を伸ばそう。

あった、あった、

なかなかのクヌギの大木だ。

上質な樹液のニオイが漂う。


この樹は根元がいくつもに別れ、樹液がじわじわと流れ落ちている。

広い樹洞にはコクワやノコギリがあちこちで

樹液に吸い付いている。

これは今後期待出来そうだ。

オオクワも夢ではない。



このポイントは今後も時々顔を出すとして、

次のポイントへ。


クヌギ大木の前に立つとこちらもぷ~んと

発酵臭が漂う。

樹上の方ではクワガタがアゴでやりあっている

音が聞こえてくる。

酒場に喧嘩はつきものだ。


でもこの喧嘩は、大いに歓迎。生命の戦いなのだ。






ゆっくりと幹にライトを当てる。



えっ



大木に重なった古い枝の隙間にちょっと大きな尻が見える。



何だ!あいつは!!



しかし、次に光を当てたときにはその姿は無い。


なんだ、なんだ?



脳の中で今までの採集の場面が駆け巡る。



ライトを当てた時、尻が赤く透けたように見えた。


この赤さはノコギリクワガタ

とかの赤さではなく、


ライトが体を通過する時にうっすらと

浮かび上がる赤さだ。




これは超レア産地のオオクワメスを椎の樹から採った時にも感じた。

でも、まさか・・・

また、明るさを嫌う素早さも過去に採った天然オオクワを髣髴とさせる。

見た感じの尻の大きさはコクワの特大サイズぐらい。

ここで脳がはじき出した答は、

特大サイズのコクワか小さなオオクワだ。


さて、どうやって採ろう。

失敗は許されない。


私は車からブルーシートを持ってきて、

大木の下に引いた。薮もあるので上手く敷けないが、

少しはカバーしてくれるだろう。

重なった枝の高さは地上約4.5メートル。


このくらいなら手足だけで登っていけるが、

出来るだけ枝に振動は与えたくない。

私は3尺の脚立を持ってきて、そっと幹にかけ、

重なった枝近くの二股スペースに片足を置いた。




先ほどの個体が隠れた枝は近くで見ると、半分腐っており

ところどころに亀裂が入っていた。




そうか、この隙間のどこかに身を潜めているのか。

私は幾つかの腐った亀裂を掻き出し棒で探っていった。

中は半分土化している。

3ヶ所目くらいをクイッとやると


ガガ――ン



亀裂の間に鋭いアゴが!!



一瞬、ネブトの大歯?とも思ったが、

そのアゴは土化した木屑に埋もれながらも


オーラを放っていた。


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▲携帯で撮影したありのままの姿

オオクワの中歯だ!!


オオクワの体の大部分は亀裂に挟まっているので、


すぐには出てこない。


写真だ!写真!


しかし、こんな日に限ってデジカメは無い。

私は携帯を胸ポケットから慌てて出し、そいつに向けた。

でもすぐ撮れるわけじゃなく、ライト設定はどれだっけかと

ドキドキ慌てながらの作業。

万が一、この隙を狙ってオオクワが亀裂から飛び出そうものなら

闇に紛れて探し出すのは困難(一応網も添えているが)。


やっとの事で携帯のライトを点け、少しズームを効かせて撮影。

計4枚を撮った。

とにかく野生の姿を撮った。


これがお前とのファーストコンタクト。


一生の記念なのだ。


よし、あとはどうやって採るかだ。

自分の片足は半分宙に浮いた状態。

左手に大きな懐中電灯。

右手に掻き出し棒。

ライトを持ちながら、掻き出し棒を使うとオオクワに添える手が

足りず落下の危険性がある。

掻き出し棒である程度出したら掻き出し棒側の指で

掴まえる作戦が考えられるが、危険がともなう。

とにかくこのオオクワは千歳一隅のチャンス。


絶対に掴まえなければいけないのだ。


落としてしまっては悔やんで夜も眠れなくなるだろう。


ここには、自分とオオクワのみ、


日本代表サッカーの駒野選手のように支えてくれる仲間はいないのだ。


失敗はゆるされない


掻き出し棒で尻側を引っかけてみるが、

やはり天然物、がっちりと踏ん張っている。

2度3度やるが、動かない。

無理に掻き出すと傷を負わせてしまう、

そんな不安が・・・。


ふと、オオクワのアゴの外側から左手の指を入れてみた。

ぐぐっ、入る。


奥につながる細いトンネルのようなものがある。

中にムカデでもいたらとは思ったが、

ムカデに刺されるよりはオオクワを選択するのは

オオクワ採りの義務のようなものだ(ホントに刺されていたら

こんなカッコイイ事は言えないが)。




そう言えば、樹の上で約15分くらいいるので、

さっきから蚊が次から次へと攻めて来ていた。




しかし、今はオオクワと自分の世界。

モスキートには好きなだけ吸わせてやろう。




次にライトを左に持ち変え、亀裂に照射。

右手の人差し指をオオクワの尻側にグイッと入れ、

じょじょに押し出す。




途中でアゴに指を挟ませてところうかとも考えたが、

痛さの勢いで振り払ってしまうかもしれないので止めた。

また、アゴを引っ張って出そうともしたが、やはり踏ん張りが強く、

頭だけ取れたら元も子もないとこれも断念。


掻き出し棒プラス指で

ある程度、背中が出たところで落とさないように

さらに力を入れて

ついにそいつを掴み出した。



やった~!!!


千葉でオオクワを採るなんて何年ぶりだろう!!


やった!!


私は早々に採集道具を片付け、車へ。

オオクワはしっかりと自分の手の中にいる。

この日は、デジカメを忘れただけでなく、なんとクワガタ入れ

まで持ってきていない。

備えあれば憂いなしというが、自分の

場合、用意周到の時は意外にオオクワは採れない。

後部座席の方にビス入れのケースがあったので、

中身をひっくり返し、ティッシュと葉っぱを入れ

オオクワを入れた。


帰り道では、信号が赤になる度、オオクワを確認。



空気の止まった不思議な夜の


千葉県産オオクワガタ


出遭ってくれて有難う


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千葉県北部産オオクワガタ♂

2010年7月6日午後7時45分頃採集

採集樹・・・クヌギ

サイズ・・・45.5mm